アジアの理美容事情 その3 ファッションカラー編

我々の常識が現地の非常識と知った話・・・

海外担当2年目となった頃、年間の売上予算に基づき国別顧客別の戦略を立てる為、過去のデータを引っ張り出して内容を精査していました。

そこで見えてきたこと
それは技術商品の販売実績が少ないということでした。確かに店販用のヘアケアやスタイリングはそれなりに販売実績がありますがそれに対して業務用であるパーマやカラーの実績が少ないということに気づき技術商品を中心に販売することを決め、日本でも旬のヘアカラーを売り込むことにしました。
しかもファッションカラーを・・・
後にこれが苦労となることも知らずに・・・

それまでの海外出張でアジアに参入している日本の超有名メーカーさんでもヘアカラーのジャンルだけはあまり市場で見なかったため、これは(ブルーオーシャンだと勝手に思い込み)商機があると安易に考えていました。 私が当時力を入れて売り込んでいたメーカーさんのラインナップも先にグレイカラーのラインを発売し、そのブランドに新たに寒色系のファッションカラーを発売したため、その流れに乗って営業をかけました。出張へ行く前に先に和訳した資料を先方へ送り読み込んでもらいます。その後サンプルとを送り込んでテストをしてもらいその後に現地へ出張し状況をヒアリングするという流れです。一連の手配を済ませ期待を膨らませて現地へ入ると、そこで出てきた彼らの答え 

”染まらない ほんの少し明るくなったくらい” 

話を紐解くとどうやら彼らのカラー剤のイメージは染める髪の色(アンダー)に関係なくどんな髪であっても一律にその色が発色すると思っているのです。

例えば12レベルのアッシュを黒髪に染めた場合と16レベルの髪に染めた場合では発色が異なることは当然の常識として我々は理解していますが、我々の常識は彼らの非常識だったのです。

なので、例えとして ”黒い画用紙に色鉛筆で絵を描いても何を書いたかわからないでしょ?” と理解を促し次に ”白い画用紙に色鉛筆で絵を描いたら何を書いたかわかるでしょ?” と理解を促し、前提となる条件⇒染める髪の色が違えば発色も異なるということを説明し一応理解はしたが、染まらなければ意味が無いとのことで結果的に導入に至らず・・・ この件だけで実に数時間話をしました。一番疲れたのは通訳さんだったと思います(笑) 代理店でこのようなことになるということは、彼らの顧客サロンでも同様のことになるのだろうと推測しました。一方、これを機にアプローチ方法や講習の提案などをしながら何度も何度も売り込みをかけましたが後任に担当をを渡した後から現在に至るまでもこの代理店にファッションカラーは導入されず長い年月だけが経過しました。

要因は色々あると思いますが、一番の違いは2剤の濃度だと思っています。日本の6%に対し現地では欧米仕様の12%の濃度を使用します。そしてこの代理店はイタリアのカラー剤を取り扱っています。この倍の濃度の違いが発色に大きな差があると思います。これは我々の営業の力でどうすることもできません。12%を使用した発色を標準と考えれば6%を使用した発色は当然物足りないしカラー剤に貼り付けている色識別シールそのものの色になっていないと思うのは彼らの常識からすると当然のことかもしれません。

なので日本超有名メーカーさんのカラー剤でさえも現地であまり見ないのにはそれなりの理由があったのだとこの時感じました。そしてそれをブルーオシャンと思い込み商機と考えたのは本当に浅はかだったと(笑)

そしておまけ話として
日本のヘアカラーのチャートは縦軸に明度があり下から上に数字が上がるほど明度が上がっていき横軸は色相を表し色の系統ごとに横に展開されていき理論的にも理解し易い表記です。そして1つの色目に対しチャートが半分に分かれていて左半分は黒髪に染めた場合の発色イメージを右半分が白髪もしくは18レベルくらいのブリーチヘアに染めたイメージを示しています。
すなわちユーザーがイメージし易いように2つの前提条件を表しています。

一方アジア諸国で流通している欧米系メーカーのカラーチャートは日本のメーカーさんがつくる理路整然とわかりやすいチャートではなく色相と明度の関連が理解し難いチャートで日本のカラーチャートで慣れている我々も理解し辛いものなのです。もちろん黒髪に染めた場合と白髪に染めた場合という様な親切丁寧なことなどありません・・・というより欧米の人は元々髪の色が明るいので黒髪に染めるイメージは必要ないのだと思います。そしてご覧の通り色相の配置は感覚的な世界かもしれません↓

このようにカラーチャートの表示方法にもこれくらいの差があるのです。

”色物商材”(カラーやメイク化粧品)と”色恋” の2つの ”色” を引用して ”色の道は難しい” と当社の歴代先輩からの言い伝えがあることを思い出した海外出張でした。(笑)

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